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神戸地方裁判所 昭和42年(借チ)20号 決定

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔決定理由〕右認定の諸事実によれば予想される本件土地の仮換地、正確には前記本件土地等の仮換地上の仮に借地権の目的となるべき部分については、附近の土地の利用状況の変化があり、また本件土地については借地権設定後に準防火地域の指定もなされ、いわゆるその他の事情の変更もあつたものというべく、右客観的事情変更により土地の合理的利用を考えるならば、堅固な建物を建築するのが、より合理的であり、現在借地権を設定するとすれば堅固な建物の所有を目的とする借地権を設定するであろうと認めるのが相当である。

なお、本件において裁量すべき一切の事情を考慮しても借地条件の変更を認容するにつき支障はない。

してみると本件土地についての借地条件変更の申立は、これを許容すべきものである。

そこで次に附随裁判について検討することとする。

本件借地条件の変更にあたつては、存続期間の延長、賃料の増額、財産上の給付等の附随裁判について考慮する必要があるが、その裁判の基準となるべき土地は、本件土地ではなく、現実に使用収益すべき予想される本件土地の仮換地、正確には生田神社工区五街区一六の一号地上に土地区画整理事業の施行者から指定を受ける仮に借地権の目的となるべき部分の土地について考えなければならない。

そのためには申立人が土地区画整理法八五条一項によつて借地権の申立をなし、土地区画整理事業の施行者から現実に右仮換地上仮に借地権の目的となるべき部分の指定を受けることが必須の前提条件である。

ところで本件においては従前の土地についての借地権の目的たる土地の範囲について当事者間に争いがあるから、申立人において土地所有者たる相手方と借地権者たる申立人との連署した書面をもつて、その借地権を施行者に申告して、右仮換地上に仮に借地権の目的となるべき部分の指定を受けることは期待できない。

しかし同法八五条一項によれば、当該権利を証する書類を添えて、その権利を施行者に申告することもできることとなつているところ、当裁判所は本裁判の前提問題として、さきに従前の土地について借地権の目的たる土地の範囲を判示認定したから、申立人は本裁判の確定(前提問題についての当裁判所の判断が抗告審で是認されることを含む。)をまつて、本決定書の該部分を右当該権利を証する書類として添附し、借地権の申告をなすことができ、これによつて施行者から前記仮換地上に仮に借地権の目的となるべき部分の指定を受けることができると思料する。

そこで申立人が施行者から右のように仮換地上に本件土地に照応する仮に借地権の目的となるべき部分(本件土地の仮換地)の指定を受けることを条件に附随の裁判をなすこととする。

(1) 存続期間については、申立人が予定している堅固建物、すなわち、中量鉄骨ブロック造五階建の店舗兼居宅の規模、構造、その耐用年数、堅固建物所有を目的とする借地権については、その期間は少くとも三〇年とされ堅固建物、すなわち、中量鉄骨ブロック造五階建の店舗兼居宅の規模、構造、その耐用年数、堅固建物所有を目的とする借地権については、その期間は少くとも三〇年とされていること、その他の事情を考慮し、鑑定委員会の意見も参照して、申立人が土地区画整理事業の施行者から本件土地の仮換地、正確には前記仮換地上に仮に借地権の目的となるべき部分の指定を受けた日から四〇年間存続することとする。

(2) 賃料についても、借地条件の変更にともない相当の増額をなすべきものと考える。

ところで前認定のように申立人は本件賃貸借契約締結に当つて相手方に対し一〇万円の権利金を支払つていることが明らかであるから、賃料の算定に当つても、これを考慮する必要がある。しかして申立人は昭和二四年三月以来、本件土地全部の賃料として、当初は一日につき一〇〇円、後に一月につき三、〇〇〇円(3.3平方米坪当り一六〇円を)支払つて今日におよんでいるものであること前認定のとおりであるが、これを昭和二四年三月当時の本件土地の地価3.3平方米(一坪)当り一万三、七〇〇円に照して考えれば、年六分の利廻りとしても六八円のところ、相手方は一六〇円を徴していた計算になり、不当に高額であつたことが推定できる。しかし3.3平方米当り一六〇円は現在としては低額に過ぎるところ、右の如く相手方が賃貸借契約当時から相当長年にわたつて、かなり高額の賃料を徴して来たことを考えると鑑定委員会の意見3.3平方米当り一カ月五八〇円も決して低いものとはいえないが、一方、賃貸借契約締結以来一度も値上げがなされていない事実、前掲認定のように昭和二九年三月賃料値上げについて相手方と申立人の間に紛争があつたとき結局合意には至らなかつたものの、申立人も本件土地全部につき賃料を一、〇〇〇円(3.3平方米坪当り五四円)値上げして、一カ月四、〇〇〇円までは支払おうとあゆみ寄つた事実もあること、一般に地主は何らかの機会をとらえて過去の不足地代を回復したいとねらつているものであること等、その他一切の事情を考慮して当裁判所は3.3平方米、坪当り一カ月六三〇円を相当と考える。

なお、右賃料の増額も現実に使用収益し得べき本件土地の仮換地についてのもので、申立人が施行者から前記仮換地上に仮に借地権の目的となるべき部分の指定を受けることを条件として、該部分の土地について右の坪当り一カ月六三〇円を支払うべきものとする。

(3) 最後に財産上の給付について考えることとする。

申立人にとつては現賃貸借契約の残存期間が約一〇年余であるところ、堅固な建物所有の目的の借地条件に変更されることによつて、右のように存続期間が約三〇年延長され、それだけ借地権価格も増加し、本件土地の仮換地を最高度に利用することができる利益があるのに反し、相手方にとつては借地権消滅の期待が薄れ、更新の時期が遠ざかり、仮に期間満了の際に賃貸人たる相手方に正当の事由が認められる事情が生じても、賃借人たる申立人から買取請求権を行使されることを考慮すれば事実上更新拒絶権の行使を制限される不利益を被ること明白である。

かような双方の利害を調整するためには申立人に相当の金員の給付を命ずるのが相当である。

ところで、申立人が本件借地条件変更後現実に使用収益し得べき土地は本件土地ではなく本件土地の仮換地であるから、申立人は施行者から前記仮換地上に仮に借地権の目的となるべき部分の指定を受けることを条件に該部分の土地について給付金を支払うのが相当である。

しかして申立人が本件賃貸借契約締結に当つて相手方に対し一〇万円の権利金を支払つていること前示のとおりであるから、予想される本件土地の仮換地の場所的関係、当事者間の従前の経過、さきに定めた存続期間、賃料その他本件に顕れた諸般の事情を考慮すれば、鑑定委員会の更新料(不足賃料の後払い的性格のもの)と用途変更による承認料を加算した額を以つて一時給付金とする考え方は、まことに正当であると考えるから、当裁判所は右の鑑定委員会の意見を全面的に採用し、本件土地の仮換地につき3.3平方米、坪当り一二万七、一一六円の財産上の給付を申立人に命ずるのを相当と考える。(小川正澄)

目録

一、借地権の目的たる土地

神戸市生田区下山手通一丁目六番の一

宅地 274.57平方米(八三坪六合)のうち、

宅地  61.78平方米(一八坪六合九勺)

別紙図面(イ)(ロ)(ハ)(ニ)(ホ)(ヘ)(イ)を順次結んだ範囲の土地部分<省略>

二、借地契約の条件

(1) 右の土地を目的とし、昭和二四年三月一五日申立人と相手方の間で締結された非堅固建物所有を目的とする賃貸借契約。

(2) 存続期間の定めなし。

(3) 賃料右土地全部につき一カ月金三、〇〇〇円(毎月月初め支払い。)

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